若林酒造の成り立ち

薬効著しい温泉と天然の漁港に恵まれた温泉津町は、江戸時代には人口20万人を擁していた石見銀山の諸物資や銀の海上輸送の拠点として栄えていました。
江戸時代後期に大浜村(現在の温泉津町小浜)で海産物問屋を営む本家「魚屋」から、力兵衛(初代)が分かれ本家近くで「石田屋」を興したのが若林酒造の始まりです。当時は酒造業をしておらずいくつかの商売を手広く展開していたそうです。実子がいないため弟の敬三郎(2代)が跡を継ぎその息子の栄一郎(3代)が明治2年のとき酒造業を開業しました。それ以降は酒造業に従事し現在の当主(若林酒造有限会社代表取締役)は邦宏(7代)になります。
開春(かいしゅん)の由来
創業当時から使用している銘柄「開春」の由来は、中国の愛飲家であり詩人であった陶淵明という人物の詩の1節から取っています。
「春」は文字通り季節の事を指しますが、古い言葉で酒を意味します。春といえば日本では桜をイメージしますが中国では梅をイメージしており開春のモチーフも梅を使用しています。
梅は寒い冬の時期を乗り越えて春に綺麗な花を咲かせます。日本酒も同様に寒い冬の時期に一生懸命酒造りに励めば春には美味しいお酒ができるだろうという意味を込めて銘柄を「開春」と名付けました。

開春の特徴

酒には個性が必要。流行りの酒に流されることなく自分たちの目指すべき味を表現するためには個性が必要と考えています。
開春の目指す味は食中酒。酒単体で完結するのではなく、料理と合わせて初めてパフォーマンスが発揮できるように酒の部分にあえて余白を残すことを心掛けています。
ラベル右上に貼ってある三日月にも表れており、「三日月のようにどこか欠けている酒でありたい」という蔵元の思いが込められています。